新しいIBM SyNAPSEチップを発表


TOKYO - 08 8 2014:

2014年8月8日

膨大なニューラル・ネットワークの時代を開く新しいIBM SyNAPSEチップを発表

[米国カリフォルニア州サンノゼ 2013年8月7日(現地時間)発]

IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長、社長兼CEO:バージニア・M・ロメッティ、NYSE:IBM)の研究員は本日(現地時間)、百万個のプログラム可能なニューロン、2億5千6百万個のプログラム可能なシナプス、そして毎秒毎ワット460億のシナプティック・オペレーションという前例のないスケールを達成する初のニューロシナプティック・コンピューター・チップを発表しました。54億個のトランジスターから成る完全に機能する量産規模のチップは、現時点で今まで製造された中で最大のCMOSチップの内の一つで、生物学的な実時間で稼動する際、現代のマイクロプロセッサーと比べてはるかに少ない70ミリワットという極めてわずかな消費電力で作動します。補聴器用電池に相当するエネルギーで稼動する郵便切手のように小さいニューロシナプティック・スーパーコンピューターの技術は、視覚、聴覚、マルチ感覚性アプリケーションを可能にすることにより、科学、技術、ビジネス、行政、社会に変化をもたらす可能性があります。

コグニティブ・コンピューターを社会にもたらす重要な一歩である今回の画期的な成果に関するCornell Techと共同で出した論文は、Science(サイエンス)誌最新号に掲載されています。

今日のコンピューターを、人間の脳のコグニティブな能力と超低消費電力と比較すると、膨大な格差があります。この格差の溝を埋めるため、IBMの研究員は、過去に存在したことがない全く新しいニューロサイエンスにヒントを得た、1964年からほぼ世界中で使用されているフォン・ノイマン・アーキテクチャーに対当する、スケーラブルで効率的なコンピューター・アーキテクチャーを開発しました。

この第2世代のチップは、2011年の初期のシングルコアのハードウェアの試作、2013年の新しいプログラミング言語ならびにチップ・シミュレーターのソフトウェア・エコシステムを含む10年近くにわたる研究開発の集大成です。

この新しいコグニティブ・チップ・アーキテクチャーは、4,096個のデジタル、分散ニューロシナプティック・コアのオンチップ2次元メッシュ・ネットワークを有しています。それぞれのコア・モジュールは、メモリー、コンピュテーション、コミュニケーションを統合し、イベント駆動型、並列、耐故障性という形で動作します。システムをシングルチップの壁を越えてスケールさせるため、ボードに並べられたとき隣り合ったチップがお互いにシームレスに接続することができる、ニューロシナプティック・スーパーコンピューターの将来の基礎を築いています。また、スケーラビリティーを実証するため、IBMは1千6百万のプログラム可能なニューロンと40億のプログラム可能なシナプスを有する16チップ・システムを公開しました。

「IBMは、根本的に新しいアーキテクチャー、類を見ないスケール、比類がない電力、面積そして速度効率、無限の拡張性、そして革新的なデザイン手法の観点から、脳からヒントを得たコンピューターの分野で新しい分野を開拓しました。私たちは、進化を続けるシステム、ソフトウェア、サービスのエコシステムを原動力とする、今日のノイマン型コンピューターを補完する情報技術システムの新世代を予測しています。これらの脳からヒントを得たチップは、WiFiを必要とせず、手のひらに収まるサイズの感覚性、インテリジェントなアプリケーションを経由し、モビリティーを変革する可能性があります。今回の成果は、IBMの長期にわたる本質的なイノベーションに対する投資による、コンピューターの歴史における極めて重要な転換期におけるIBMの主導的な役割を裏付けるものです」と、IBM ResearchのIBMフェロー兼Brain-Inspired Computing担当チーフ・サイエンティストのDharmendra S. Modha(ダーメンドラ・S・モダ)は述べています。

当プロジェクトは、米国国防省国防高等研究計画局(DARPA)が、2008年よりThe Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics(SyNAPSE:神経形態学的電子工学システム)プログラムの第ゼロ段階、第1段階、第2段階、第3段階に約5千3百万ドルの助成を行っています。現在、Cornell Tech、iniLabs, Ltd.などと共同で取り組んでいます。

チップの製造について

チップの製造には、高密度オン・チップ・メモリーと電力漏れの少ないトランジスターからなるサムスン電子の28ナノメートル・プロセス技術が使われています。

「これは、商用化され、低消費電力のモバイル・デバイスに従来使われているプロセス技術を活用し、とても少ない電力で膨大なセンサー情報を処理することによって人間の脳をエミュレートするチップを提供するという、驚異的な成果です。これは、次世代のクラウド、ビッグデータ処理に近づいている業界にとって必要不可欠なアーキテクチャーにとってとても画期的な成果です。サムスン電子の28ナノメートル技術を通して、次世代の技術的な進展に参加していることをうれしく思います」と、サムスン電子のファウンドリー・マーケティング担当バイス・プレジデント、Shawn Han(ショーン・ハン)氏は述べています。

チップのイベント駆動型回路要素には、2008年以来Cornell Techで開発され、IBMと改善してきた非同期式デザイン手法を用いています。

「IBMとの長年にわたる協業により、人間の脳と同じようなコンピューターの開発に一歩近づきました」と、Cornell TechのRajit Manohar(ラジット・マノハール)教授は述べています。

最先端プロセス技術、ハイブリッド・同期非同期デザイン手法、そして新しいアーキテクチャーの組み合わせにより、今日のマイクロプロセッサーより4桁近く小さい20ミリワット平方センチメートルの電力密度を達成しています。

SyNAPSEエコシステムの進展

この新しいチップは、チップ・シミュレーター、ニューロサイエンス・データ、スーパーコンピューティング、ニューロンの仕様、プログラミング・パラダイム、アルゴリズム、アプリケーション、そしてデザイン・モデルのプロトタイプを完全にエンド・ツー・エンドで垂直統合させたエコシステムのコンポーネントです。

この根本的に異なる技術的な機能を社会にもたらすため、IBMは、大学、お客様、パートナー、IBM社員向けの新しい教育カリキュラムを考案しました。

アプリケーションとビジョン

このエコシステムは、非常に様々なセンサー・データを取り込み、リアルタイムな情報を文脈依存の方法で分析、統合し、複雑な現実世界の環境で見られる曖昧さに取り組むといった、データにより近いところで計算を行うという、コンピューター活用の変化を示唆しています。

IBMは、将来を見据え、消費電力、容積、速度による制約を受けているモバイル・デバイスにマルチ感覚性のニューロシナプティック処理の統合、新しいイベント駆動型センサーのチップへの統合、ニューロシナプティック・システムによって促進されるリアルタイム・マルチメディア・クラウド・サービス、そして複数のチップをボード上に載せ、最終的に百兆超のシナプスにスケールするシステム、ニューロシナプティック・スーパーコンピューターの開発に取り組んでいます。

以前試作したオンチップでニューロシナプティック・コアならびにオンライン学習を基に、IBMは、実世界の状況に適応する学習するシステムの開発を思い描いています。今日のハードウェアは現代のCMOSプロセスを使って製造されていますが、基本的なアーキテクチャーはより低消費電力、より高密度なパッケージ、より高速な能力を提供するため、将来のメモリー、3D集積、ロジック、センサー技術の進展を活用する準備が整っています。

これらの見解は著者のものであり、米国国防省や米国政府の公式見解を反映するものではありません。公開は承認され、配布は制限ありません。


当報道資料は、2014年8月7日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLをご参照ください。
http://www.ibm.com/press/us/en/pressrelease/44529.wss (US)

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